2016.12.07 Wed

福岡のCGプロダクションが中心となって制作した話題のアニメーション作品『SUSHI POLICE』。作品制作を通して見えてきた福岡のCG業界の可能性とは。

福岡クリエイティブキャンプは日本電子専門学校(東京都新宿区)で11月19日、「福岡へのU/Iターン応援イベント〜話題のCGアニメーション『SUSHI POLICE』を通して見えてきた福岡のCG業界の可能性〜」を開催しました。

TOKYO MX開局20周年記念アニメとして制作・放映され、ハイセンスで特徴的なルックが国際的にも話題を呼んだ短編アニメーション作品『SUSHI POLICE』。本作は福岡を代表する映像制作会社「KOO-KI」を中心に、福岡のCGプロダクションが中心になって制作されました。セミナーでは制作にまつわる舞台裏を通して、福岡で働くメリットや魅力などが語られました。

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◆第一部:『SUSHI POLICE』メイキングスペシャル
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第一部では『SUSHI POLICE』制作の舞台裏が、「企画/プロデュース」「アニメーション」「背景&コンポジット」の3つのパートで語られました。

「企画/プロデュース」編ではKOO-KIプロデューサーの河原幸治さんと、同社のディレクターで本作でも監督をつとめた木綿達史さんが登壇しました。本作は「配給会社から『実写映画として進めてきたが、アニメCGでの可能性を探っている案件がある』と相談され、こちらからパイロット版の制作を提案したところ、OKが出ました。タイトルしか決まっておらず、自由にやらせてもらえました」と企画の成立を振り返りました。

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▲(右)河原 幸治 氏(KOO-KI・プロデューサー)/(左)木綿 達史 氏(KOO-KI・監督)

スタッフ編成では福岡の企業で固めることを念頭に、ほぼすべての知り合いに声をかけたとあかしました。「一話5分の13話での放映で、テレビシリーズとしては規模が小さいこともあり、福岡の企業にノウハウを残したかったんです。結果的に、ほぼ狙い通りになりました」(河原氏)。木綿氏も「東京の大手スタジオと組んで、自分だけ先方に常駐するやり方も考えましたが、それだと差別化につながらないと思い、福岡中心で制作することにしました」と語りました。

「アニメーション」編ではアイメージの伊藤了太郎さんが登壇しました。本作は9社のプロダクションがエピソード単位で制作を分担しており、それぞれで特徴のある動きがつくられました。5話と4話の一部を担当したアイメージでは、3名のCGアニメーターが中心になってキャラクターのアニメーションを作成。午後と夕方で1日2回、全員で仕上がりをチェックする時間を設けたことが、クオリティアップにつながったと語られました。

講演ではビジュアルコンテをもとに、どのように映像がブラッシュアップされていったか、その過程が具体的に示されました。はじめは硬く、ぎこちなかったキャラクターの動きが、修正を重ねるたびにどんどん洗練されていき、最終的にキャラクターの性格すら感じさせられる、高いクオリティのものになっていく様子が一目瞭然。伊藤さんは「絵コンテのレイアウトや監督の演出意図を尊重しつつ、楽しんでアニメーションがつけられた」と振り返りました。

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▲伊藤 了太郎 氏(アイメージ・Director)

「コンポジット&背景」パートではKOO-KIの木綿達史さんと、同社コンポジターの中石賢悟さんが登壇しました。木綿さんは「コンポジットはただ画面を綺麗にするだけでなく、ストーリーにあわせて画面を強調するなど、演出に関係する作業です。そのため背景も含めて、社内でやりたかった」とコメント。その一方で時間的な制約もあり、After Effects上でライティングやエフェクトとあわせて行うことで、短時間でクオリティの高い映像に仕上げられたと語りました。

中石さんは「当初チームを3人から5人に増やしましたが、個々の技量差が課題でした」と説明。そのため最初の一ヶ月半を新人教育に当てつつ、ワークフローの整備にも注力したといいます。また「制作で忙しい時でもすぐに帰宅して睡眠をとることでリフレッシュでき、クオリティが上がりました」として、自宅と会社の距離の近さが貢献したと語りました。

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▲(右)中石 賢悟 氏(KOO-KI・コンポジター)/(左)木綿 達史 氏(KOO-KI・監督)

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◆第二部:座談会
〜『SUSHI POLICE』チームが語る、福岡のCG業界だからできること〜
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第二部ではボーンデジタルの西原紀雅さんをモデレータにむかえ、KOO-KIの木綿達史さんと河原幸治さん、そしてアイメージの伊藤了太郎さんの3名によるトークセッションが行われました。

はじめに西原さんから、福岡のCG業界の特徴について質問がありました。これに対して木綿さんは「良く言われるように、東京と福岡では人口でもスタジオの規模でも1/10で、福岡では10人くらいの小規模なスタジオが多い」と説明しました。そのためCGクリエイターの仕事も分業化が進みにくく、スペシャリストよりもゼネラリスト的な仕事ぶりが見られると補足。結果的に仕事の面でも自分から積極的に手を挙げて、どんどんアピールしていく人が向いているとコメントしました。

これに対して河原さんも「福岡のCG業界は経営もしながらクリエイティブも行う、プレイングマネージャーが多い」と説明しました。もっとも、プレイングマネージャーが活躍できるためには、スタジオの規模にも限界があるため、巨大な会社が少ないのではないかと指摘。これに対して木綿さんも「自分は大企業でマネジメントするのは向いておらず、現在の30人程度という規模がちょうどいい」と同意。伊藤さんも10人程度の規模が適切だとしました。

また伊藤さんは「モデリングだけ、アニメーションだけという会社は福岡では少なく、弊社でもいろいろな案件や業務を請け負っています。しかし、『広く浅く』になりやすい側面も感じています」とコメントしました。それだけに『SUSHI POLICE』ではKOO-KIのプロデュースで、アニメーション作業だけに集中できる環境が用意されていたため、良かったと指摘。今後もこのように、複数の企業によるコラボレーション企画があれば嬉しいし、福岡の強みになっていくとしました。

実際、福岡・天神を中心に、半径3キロ圏内に多くのCGスタジオが密集しており、気軽に行き来できるのが福岡のCG業界の良いところだと言います。河原さんは「何かあれば、すぐに相談できたり、チェックに来てもらえたりできます。福岡の企業で固めた理由には、そうした地理的なメリットがありました」とあかしました。一方で木綿さんは「空港まで近く、すぐに東京に出張できる反面、急に呼び出されることもありません。うまく東京と離れている点も長所です」と補足しました。

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福岡のCG業界の課題についても議論が行われました。共通の課題としてあげられたのが「CGクリエイターの人材不足」で、東京に比べると大学や専門学校の数が少なく、優秀な人材の獲得や育成はどの企業にとっても課題だと言います。「僕らが良くないのは仕事で『キツかった』自慢をしてしまいがちなところ(笑)。三日徹夜したとかドヤ顔で言って、若い人がひいているのに気づかなかったりします。ホントは楽しいことがたくさんあるので、ぜひ業界をめざしてほしいですね」(木綿さん)

CGの未経験者も積極的に採用し、社内で教育しているという伊藤さんは「数年前までは自分の隣に座ってもらって、マンツーマンで教えていた」とのこと。また同社には28歳まで営業職で、そこから専門学校に通ってCGを学び、福岡クリエイティブキャンプが縁で入社した社員も現在活躍している。工業系の大学でプログラムを学んだ経験が採用の決め手になったといいます。このように業界外からの転職事例も徐々に増えているとされました。

次に話されたのは通勤時間に関する話題。モデレータの西原さんは神奈川県在住で、会社まで片道90分間を電車で通勤しているとのこと。これに対して福岡では、ほとんどの社員が会社まで3キロ圏内で生活しており、通勤時間は10分程度の人も多いといいます。東京のCGスタジオでの勤務経験もあるという河原さんも「当時は片道50分くらいかけて通勤していて、常に終電との戦いでした。車内でも疲れですぐに眠ってしまい、本を読むなどの自己研鑽も困難でした」と当時を振り返りました。

また子供が3人いるという伊藤さんは「会社から子供が通う学校まで10分くらいで到着するので、授業参観にも気兼ねなく参加しています。東京だと授業参観に行くだけで会社を1日休む必要がありますよね」とコメント。車で約40分かけて通勤しているという木綿さんも「周囲は緑に囲まれていて、子育てをするのに最適です。夏にはよく子供たちとキャンプなどに行きます。東京では待機児童が社会問題になっていますが、福岡では保育園の面でも余裕がありますよ」と語りました。

最後に今後の展望について聞かれると、伊藤さんは「受託業務を中心にスタジオが徐々に成長してきて、個々のスタッフのスキルややりたいことが、次第に明確になってきました。もう少し人が増やせれば、余裕も生まれてくるので、いろいろと挑戦していきたいですね」とコメント。河原さんは「CGに限らず、福岡発のコンテンツをメジャーにしていきたい」と語りました。

木綿さんは「ディレクターとして一人でも多くの人に見てもらえる作品を作りたいですね。ゲーム業界に比べれば、福岡のCG業界はまだ小さく、伸びしろがあります。さまざまな形で福岡を盛りあげていきたいですね」と語り、トークセッションが終了しました。