2017.02.02 Thu

今年度Webグランプリ「Web人賞」受賞記念インタビュー! デジハリ福岡・高橋校長「人材教育こそ、究極のクリエイティブ」

#FUKUOKAより転載(2017/1/31掲載)

 

毎年、Web界で目立った功績を挙げた人物が表彰され話題となるWebグランプリ「Web人大賞」。公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が主催する賞で、第4回目となる今年度は『ポケモンGO』で世界を席巻した株式会社ナイアンティックの川島優志氏らが大賞を、さらにここ福岡からはデジタルハリウッドSTUDIO福岡ゼネラルマネージャー(校長)の高橋政俊さんが「Web人賞」を受賞しました。本サイトでも数度に渡って取り上げている、子育て中のママによる企業サイト改善活動「ママグロースハッカーズ」の試みが高く評価されての受賞です。#FUKUOKA編集部は、受賞に湧くデジタルハリウッドSTUDIO福岡を訪問。高橋さんのユニークな経歴やママグロースハッカーズにかける熱い想い、今後の展望について、お聞きしました。

■潜在的な能力を引き出せれば、ママはもっと輝ける

--Web人賞受賞、おめでとうございます。まずは、率直な感想を聞かせてください。

高橋 「運がよかった」というのが正直な感想です。これは僕個人が受賞したというより、ママグロースハッカーズに関わる全ての人がいただいた賞。他の受賞者はゲームやVR、AI、WEBマーケティングなど各分野での先端的な取り組みが評価されての受賞でしたが、僕の場合は「ママ×グロースハック」(=女性活躍推進)、「福岡」(=地方創生)などの観点が評価されたのだと思います。

--他の受賞者や企業の方から反応はありましたか?

高橋 交流会で個別にお話しできる機会があって、我々のコンセプトについて「すばらしい」「手伝えることがあればぜひ」と多くの方からご賛同いただけたのは、嬉しかったですね。まぁ、今回の受賞はノーベル平和賞のように、現状では実現していなくてもこの先の実現を期待するという“期待値受賞”が大きいと思っています。受賞者の方々が皆プロリーグだとしたら、僕らはまだママさんバレー部。実力は備わってきましたが、常に期待以上の成果を出し続けるためには、まだまだ経験が足りていません。今回の受賞で注目が高まった分、なおさら気を引き締めて、進めていきたいと思います。

--福岡からこういう先進的な取り組みが生まれたことに、東京のシーンからは驚きの声もあったんじゃないでしょうか?

高橋 そうですね。驚きの声はありましたが、福岡のIT・クリエイティブシーンが地方都市の中でも活況だということは、東京の皆さんの中にも認識があるようです。それよりも、福岡の子育て女性が抱える問題について驚かれる方が多くて。

--と言いますと?

高橋 福岡は離婚率が高く、総世帯数におけるシングルマザーの割合が全国平均より高いという事実があります。デジタルハリウッドSTUDIO福岡ではすでに約7,000人の卒業生がいて、女性は全体の5割を超えています。しかし、クリエイティブ業界で働く女性の多くが出産を機に仕事を辞めて、この業界を去ってしまっているように感じています。そんな女性たちにも、育児と両立しながらキャリアを活かして働ける環境を用意したかったんです。だから、この試みは福岡から始まったし、全国に注目されて嬉しく思っています。

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--高橋さんが、ママや女性の働き方の改善に、それほど尽力している理由は何なのでしょうか?

高橋 元をただせば、僕が小さい頃、母の内職の様子を見ていたことにあるかもしれません。父が料理人として起業したばかりの頃は、母が家で内職しながら僕らを育ててくれたんですが、その報酬が当時は1個50銭ぐらいで。母はとても頑張っているのに、1円までこんなに遠いのかと、子どもながらに愕然として。もっと高付加価値の仕事をしないと、まさに“貧乏暇なし”じゃないかと。うちの一家は親戚や親兄弟もみんなビジネス的感覚があって起業している人が多く、貧しい状況でも身近なものから資源を見つけて、それを磨いて価値のあるものにするという発想がありました。だから、女性が持っている潜在的な能力を引き出せれば、もっと輝けるはずだという思いが、僕の中にもずっとあったと思います。

■「創造的破壊」と「エデュース」 2つのキーワードを軸に活動

--高橋さんのこれまでの経歴を、改めて教えていただけますか?

高橋 僕は地元の香川から、大学進学のために福岡に出てきました。大学の研究室にあったMacを触っているうちに、その面白さにハマって、在学中にちょうどデジタルハリウッドSTUDIO福岡(当時はデジタルハリウッド福岡校)ができたので、ダブルスクールで通い始めたんです。だから僕は、デジタルハリウッドSTUDIO福岡の一期生でもあるんですよ。最初はクリエイターとして食っていくつもりでしたが、フリーランスになって1年ぐらいで、当時のマネージャーに抜擢されて、デジタルハリウッドの東京本部の改革のために、東京に行くことになりました。

--クリエイターから、デジタルハリウッドの運営側へと転換したんですね?

高橋 ええ。当時の上司に、「究極のクリエイティブは、人材教育だよ」と言われて、当時23歳だった僕は「それだ!」と思ったんです。それから、ホームページや販促ツールのリニューアル、営業の現場の見直しを行って、事業部再建や、新規事業としてeラーニングの立ち上げ等、数億円規模のビジネスを生み出す経験をさせてもらいました。また、その傍らで「ママさんカメラ部」というのを運営していて、これもママの活動に注力するきっかけになりました。

--どんな活動だったんですか?

高橋 うちの妻は、結婚を機に福岡から東京に出てきたんですが、当時は東京に全く知り合いがいないまま、孤独に子育てをしていました。そこで、子どもの写真を撮るのが好きなママさんたちを集めて、平成18(2006)年から横浜で「ママさんカメラ部」を立ち上げたんですよ。mixiを使ってコミュニティがどんどん広がっていき、最終的には全国に支部が13か所できて、1,000人規模の組織になりました。そこからプロが誕生して、スタジオを持ったり雑誌に連載を持ったりするママさんも出てきて。元は素人でも、こんな風になれるんだと僕らも驚きました。ママたちの成功を見てきた体験がこの時にあって、これがその後の福岡での展開につながっていくんです。

--福岡にはどんな経緯でいらしたんでしょうか?

高橋 デジタルハリウッドで自分ができることは全てやれたという感覚を得て、平成22(2010)年に、絵本ナビという絵本情報サイトの会社に転職して新規事業を立ち上げました。翌年に東日本大震災があって、親戚や家族の近くに移住したいと考えていたところ、デジタルハリウッド福岡校の再建を頼まれ、平成24(2012)年12月に福岡へ移住し、今の立場に落ち着いたという流れです。

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--福岡校の再建は、どのように進めていったんですか?

高橋 デジタルハリウッド福岡校はもともと、福岡や九州でのデジタル人材育成のために、県から誘致を受けてできた、産官学連携によって生まれた組織でした。しかし当時はそのコンセプトがすっかり薄れて、評判も落とし、苦しい経営状況が続いていたんです。ですからまずは、この特徴を生かして再度行政や企業に働きかけ、講師陣も地元福岡で活躍している著名な方々を多く招いて、魅力をはっきりと打ち出すカリキュラムを組んでいきました。とても骨の折れる改革でしたが、校長就任1年目からマイナスを大幅に減らし、2年目には無事、プラスに転じさせることができました。

--2年目にして再建とは素晴らしいですね。高橋さん流のビジネスの根本にある考え方とは、どんなものなんでしょうか。

高橋 僕の中で、二つの大きなキーワードがあります。一つは「創造的破壊」。何かを作り出すために、まず常識を疑う。よりよくするために、大胆に変えていく。そうやって、20代は多くの事業再建を手がけてきました。そしてもう一つは、「EDUCE(エデュース)」。これは、EDUCATION(教育)×PRODUCE(プロデュース)の造語です。教育によって隠れた才能を引き出し、それを社会に提供していく。能力を持った人をさらに結びつけて、新しい何かを作り出していく。この二つが、自分の意思決定を左右する大きなキーワードとして、今も意識しています。

--福岡のIT・クリエイティブシーンについて思うことを聞かせてください。

高橋 僕が学生だった頃と比べて、選択肢ははるかに広がっているし、チャンスも多いのは良いことだと思います。起業やスタートアップというところまで、自分で考えて行動できる人はもちろんそのまま突き進んでほしいですが、うちの学校に来るのは、そこまで自信がない人も多くいます。そういう人たちにも、この業界を好きになってもらいたいし、能力を発揮できるチャンスが広がれば良いなと。それが、裾野を広げるということだと思います。逆に僕らも、待っているだけではなくて、この業界の楽しさをもっと積極的に伝えていかないといけないと感じています。

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--教育者ならではのお考えですね。では、高橋さんご自身の、今後の目標を教えてください。

高橋 ママグロースハッカーズの活動を推し進めて、ロールモデルを作り、これを全国に展開していくことですね。現状ではまだ目標としている月30万円の在宅ワーク実現まで、あと一歩届いていませんし、スキルが追いつかずに引き受けられない仕事も多くあります。ゆくゆくは、ママグロースハッカーズで学校を作り、ママが次のママを育て、組織として自走していける仕組みを作っていきたいですね。また、ママに限らず障害を持っている方々、現役を引退したスポーツ選手など、今の社会でうまく能力を発揮できていない人たちや、子どもたちにも、この仕組みを活用できるように広げていけたら、素晴らしいことだと考えています。

 

【プロフィール】
高橋政俊(たかはし・まさとし)さん
昭和52(1977)年、香川県生まれ。デジタルハリウッドSTUDIO福岡ゼネラルマネージャー(校長)、株式会社九州インターメディア研究所プロデューサー。デジタルハリウッド福岡校(現デジタルハリウッドSTUDIO福岡)第一期生としてクリエイティブを学び、フリーランスを経験した後、デジタルハリウッド株式会社へ参画。東京本部をはじめ、複数の不採算事業を再建する。また、平成18(2006)年には新規事業として日本初の同期型eラーニングによるクリエイター養成スクール「デジハリ・オンラインスクール」を手掛け、成功へと導く。平成24(2012)年、デジタルハリウッド福岡校の校長に就任。福岡市や地元企業との産学官連携による独自の学校経営や教育スタイルを展開。各種教育機関、企業のコンサルティングやアドバイザーとしても活躍している。平成28(2016)年、WEB人賞受賞。またタレント活動として、RKB「今日感テレビ」コメンテーター等の実績がある。特技は水泳。平成26(2014)年から競技を再開し、日本マスターズ水泳九州大会で100m自由形、200m自由形で1位を獲得。

 

【関連リンク】
Webグランプリ オフィシャルサイト
http://award.wab.ne.jp/